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このページでは舟宿にまつわるいろんなお話、屋形舟の歴史をご紹介しております。
不定期ではございますが少しづつ更新して参りますので、お楽しみください。ぜひご意見・ご感想などお寄せください。

こぼれ話

昨年ドラマの撮影が多かったのですが、ある晩、撮影中に急に雨が降ってきて、気の毒なので役者さんたちに店内に入ってもらいました。そんなとき、一人の役者さんが「ところで、あの屋形舟を二人で貸し切る人なんているんですか?」

−−「ええ、いらっしゃいますよ。」
すると役者さん「えっ」とばかりに身を乗り出して「どんな人ですか?」

数十年も昔の話−−
柳橋の料亭さんは大川《隅田川》沿いにずらりと並んでいて、大川にむかって張り出し桟橋を造っていました。船宿は料亭さんから呼ばれて舟を桟橋につけます。するとそこから、旦那衆が芸者さんたちと屋根舟に乗り、舟遊びを楽しむのです。夜の大川は、そんな舟が行ったり来たり、とても賑わっていたものです。

珍しくも芸者さんと二人きりで舟に乗られるお客様がありました。
お台場あたりまでくるとお姐さんが心付けを渡して「船頭さん、少し休んでて。灯りがついたら戻ってきてね」…ってこともあったそうです。「なんだか、忍ぶ恋か別れ話かって様子だったなあ。」と、昔の船頭さんから聞いたことがあるんですよ。
50年前のことですけどね−−。

そんな話などして皆さんと和やかになったところで雨が上がり、撮影再開、となったわけです。

以前、お父さんからの「ありがとう」でご紹介しましたように、最近でも親子三人で乗られたり、めったに会えない友人同士おふたりでしみじみ酒を酌み交わす方もいらっしゃいました。

船尾で天ぷらを揚げるつい少し前までは、舟で天ぷらを揚げておりますと、お客様が艫(とも 船尾)の方へいらして、夜風を感じながら、よくたわいのないお話をしたものです。

いろいろお話しするうち、お客様とも親しくなって、それも楽しみになっていたように思います。

現在では、屋形舟も大型になって、客室と調理場がはっきり分かれておりますし、また大勢のお客様が乗られることが増えましたので、親しくお話しする機会も少なくなりました。それが少し寂しいところです。

この『屋形舟今昔』は、そんな思い出話やこぼれ話を皆さんに知っていただければと綴ってきました。ですが、しゃべるのと訳が違って、なかなか筆が進まない(キーボードが進まない?)。いざ文章にしようとすると難しいものですね。

それでも、舟の中でお客様とお話しするつもりで『今昔』を続けていきたいと思います。

…そうそう、そういえばこの前、早めにお見えになったお客様があって、出船まで屋形舟や昔の話などいたしました。時間よりちょっと早めにお見えになると、面白い話の一つもできるかも?しれません。

2008年2月9日

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